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9月末の「染色体」研究会

  • 執筆者の写真: Shigehiro Kuraku
    Shigehiro Kuraku
  • 9月5日
  • 読了時間: 3分

当研究室では多くの場合年度あたり2件の遺伝研研究会を主催しています。NIG-JOINTの制度に基づく研究会のことです。


研究界の傾向として(テーマや分野によっては)集会過多な感じもありますので、毎年開催しているテーマはありません。他所では似た集会が開かれにくいテーマに重点を置きたいという方針のもと、分子系統学をおもなテーマとするものを2022年と2024年に開催し、生物多様性ゲノミクスについての会を2022年と2025年に開催しました。下記は、当研究室が主催(一部は外部オーガナイザによる開催の内部担当)した研究会のリストです。分子系統学と生物多様性ゲノミクスの会以外に、板鰓類研究会のシンポジウム(通常隔年開催)のない年に軟骨魚を含む海洋生物研究をテーマとする会を今後も開催したいと考えています。


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そして、今年度2件目として、9月29、30日に研究会「染色体構成と核型からみるゲノムの多様性とその理解」を開催します。本日、一般参加申込を開始しました。遺伝研公式HPの研究会のページにてプログラムの概要をご覧いただけます。参加受付もそこからリンクしています。講演タイトルは現在は仮のものが入っており、今月下旬に最終版を掲載いたします。


9月5日に発生した停電の影響で上記ページが一時的にアクセスできない状態のため、参加受付フォームへはこちらから


開催趣旨:細胞核における染色体構成、すなわち核型はゲノムの鳥瞰図であり、生物種ごとにユニークな進化の賜物である。DNA配列情報は遺伝情報として染色体に刻まれ、次世代に遺伝情報を受け渡す実体としての染色体の構造・機能・動態とその進化をより深く理解することは、遺伝のメカニズムを探る上で欠かすことができない。染色体の研究は、その数や形態を調べる核型解析に始まり、DNA配列情報に基づいた分子細胞遺伝学的手法(FISH法)やイメージング技術を駆使した3D-FISH法、分子細胞生物学的手法の応用によるクロマチン解析法、Hi-C法などへと展開を遂げてきた。一方で、NGS技術の進展に伴い、ロングリード手法に基づいたほぼ完全なDNA配列の解析も可能となり、セントロメアやテロメアの詳細な構造の究明も視野に入ってきた。様々な生物種における染色体構成/核型を比較し、その多様性の成立プロセスと細胞の挙動への影響を解き明かす上で、どういった課題が残されているのか?本研究会では、染色体をキーワードに、動物および植物における染色体レベルでの研究者と大規模ゲノム解析を手掛ける研究者が一堂に会し、試料の調製からインシリコデータ解析まで幅広い話題を議論する場を提供する。


遺伝研では染色体やクロマチンをテーマする研究会がいくつも開かれてきました。核型進化をその興味の核に置いている今回の研究会の毛色はやや異なるものであることが上記趣旨から伝わると思います。当研究室でのゲノム解析を裏打ちするデータを得るのに、細胞遺伝学的手法による染色体解析が効力を発揮することは、最近の軟骨魚類の性染色体の研究でも感じました。その実行部隊であった現・徳島大の宇野さんと、以前よりご縁ある総研大・田辺先生にお声がけし、このお二人を外部オーガナイザーとして実現しようとしている会です。2005年ごろに自分が爬虫類ゲノムの全体像を思い描きたいとき、個別遺伝子をプローブとするFISH実験によりそれを手助けしてくださった当時北海道大学の松田洋一先生へ何かお返ししたいということや、遺伝研にゆかりあると存じている今井弘民先生にもお目にかかれたら、という思いもありました。


時間調整役ではありますが、私自身もさいごに話題提供しますので、上記の2005年ごろのことを振り返りつつ、それを今見返すとどうなのかということ、そして、最近訪問してきた英国サンガーセンターからの持ち帰り話題などに触れられたらと考えています。





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