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  • 執筆者の写真Shigehiro Kuraku

研究室配属前に

更新日:2023年4月1日

非常勤講師としての大学院生向け「科学英語」の講義を3年続け、今年度の分を終えました。まさに自分のためにもなる経験でした。一般論として書きますが、科学英語を学ぶ前に、「英語(高校までの知識を前提として英会話と英作文)」と「(日本語でよいから)科学のための文章の書き方」を学んでおく必要がある、ということが言えると思います。英語の論文がうまく書けないというとき、英語がうまく書けない、というのが問題なのではなくて、日本語でも訓練が十分ではないのかもしれません。


英語圏でも、往々にして、大学の学部のカリキュラムにはScientific Writingという講義が用意されています。いわゆるネイティブでも、わざわざ学ぶ必要がある、とされていることなのです。科学のための日本語の文章の書き方を学んだあとに科学英語を学ぶというのが妥当な順序でしょう。研究者を目指すならもちろん、科学に関わる仕事に就きたいと望む人は、「英語」、「科学のための文章の書き方」、そして「科学英語」で学ぶべきことはそれぞれ別であると認識しておくこと、そして、大学の3年を終えるまでに、これらをできるだけ身に付けておくことを強く薦めます。うまく書けるようになるということだけでなく、執筆にかける時間を短縮できるという効果もあるはずです。


「科学のための文章の書き方」を学ぶための入り口として、「理科系の作文技術」という新書をまずお薦めします。いまなら漫画を織り交ぜて説明している版も出ています。ほかに「理工系のための文章の書き方」という本もお薦めします。実践力をすぐに求めるなら、もしかしたら、後者だけでも良いかもしれません。


日本の研究力を上げるために、こういった面をテコ入れすると、分野を超えた効果があるはずです。広く状況を知っているわけではありませんが、もし上記のような訓練の機会、それも実践的な機会が大学の学部教育で用意されていなければ、まさに研究力のネックとなってしまっているのかもしれません。



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