• Shigehiro Kuraku

Tree-thinkers?

'treethinkers'この研究室ホームページのドメイン名です。複数形のようになっていますが、もちろんこんな単語はありません。このサイトを準備する際、ダイレクトに自分の苗字や研究所名を入れるのはどうかと思い、'tree-thinking'などでドメイン登録しようとしてみたら、それは既に使用されていて、代替候補のひとつとしてtreethinkerが出てきたのでした。


その元となった'tree-thinking'について。'tree-thinking'は、「系統樹的思考」とでも訳せばよいでしょうか。生物進化は種の枝分かれの歴史(遺伝子の水平移動や雑種形成によっていったん分かれた枝がくっつくこともときにはある)。現存する種の多様性や複雑な生命現象の成立過程を知るために、系統樹を頭に思い浮かべ、ときには図に描いてみる、そうすることで、どの枝でどんな変化が起きて、現在の違い、そして多様性につながったのかが見えてきます。


分子の研究においてこれを実践するには、まず生物の系統関係を知ること、そして、調べたい対象について、より客観的なデータセットを用意すること、などが必要です。たとえば、遺伝子のレパートリの変遷を知りたければ、そのデータセットというのは、種のラインナップについて取り漏らしのできるだけ少ない、そして、できるだけ分子の全長をカバーした、アラインメント、つまり、過去からの変遷を反映する形で配列を整列したもの、ということになります。ほかにも、分子の配列について言えば、どの生物の系統で変化のスピードが上昇あるいは下降したのか、というゲノム全体の傾向を知ることも、得られた仮説を解釈するうえで重要です(たとえば、硬骨魚では上昇、軟骨魚では下降、という傾向)。


Tree-thinkingの実践について、以前、私の視点で総説(Kuraku et al., Dev. Growth Diff. 2016)を書きました。おもに発生生物学での話題を中心に、自分の研究室からの成果も事例として取り上げながら、紹介しています。あと、さまざまな判断のステップを用意しながら、できるだけ簡便に分子系統樹を推定するための入り口として、aLeavesというオンラインツールを以前つくりました。実は、私自身が学会会場などで、気になった遺伝子の系統樹をすぐさま見ることができるように作ってみたものです。aLeavesは、最初に過ごした研究室の先輩だった加藤和貴さんらが開発された高速アラインメントプログラムMAFFTと連携しています。


配列情報が膨大になって、最初の検索そして選択が非常に大変ですが、分子生物学全体の基本として、種間の遺伝子の対応関係(オーソロジー、パラロジー)の認識がより大事になっている、そしてそのために、実践手順をさらに普及させることが重要になっていると感じます。長くなりましたので、今日はここまで。



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