top of page
  • 執筆者の写真Shigehiro Kuraku

研究室のテーマ

更新日:3月24日

どういったテーマを掲げて研究を進めているかという話題に触れておくことにします。すでに色々なところに書いたつもりになっていたせいか、わざわざ立ち返ってこのブログで話に出すことがなかったと思います。


本研究室では、ゲノムDNA配列情報を分子系統学的観点から解析するとともに、ゲノムワイドな分子情報プロファイリングがもたらす細胞レベルの現象の知見を統合し、複雑な生命の成り立ちを理解するための研究を進めています。脊椎動物を中心とした、生物学的に際立つ特徴を持つ希少生物を含む多様な生物を対象としています。主要なテーマは以下の3つに分けられます。


1) DNA配列の種間比較によるゲノム構成の進化的変遷の解明

2) 細胞レベルの現象の理解に基づくゲノム進化機構の解明

3) ゲノムワイドな情報の取得および利用のための方法の高度化


上記3点は、さまざまな意図を織り込んで、短く記したものです。それぞれどういう内容を想定しているかは、Researchのページに説明を加えています。ちなみに、ゲノム配列情報の新規読み取りにも注力はしていますが、それはいわば上記テーマに挑むための材料確保のようなものであり、それ自体をテーマとは考えていません。


特定の生物や現象、あるいは遺伝子を絞り、それをテーマに掲げている研究室が多いと思います。本研究室では、そういった絞り方を第一には考えてはいません。視野を広げることで、より汎用的な解析技術を磨いたり、より広範な生物にあてはまる知見を導き出したい、と期待しているためです。その代わりに、ヒトや実験動物において得られた分子生物学の深い知識を踏まえ、偏りのない種間比較に基づいて、現存する生物における表現型の多様性をゲノム情報発現メカニズムの変化で説明するという研究の進め方をとくに重視しています。このようなスタンスで、これまで、おもに発生・生理・内分泌のそれぞれの分野の多様な問いに挑む研究を進めてきました。


当研究室において、上記のような研究の進め方のノウハウに触れたメンバーには、一か所に留まるのではなく、のちにさまざまな分野で実践することで生命科学を推し進めてほしいと考えています。こういったノウハウの源となることが、分子進化学やゲノム情報学が生命科学において果たしうる大きな役割であると考えています。


遺伝研では毎年、年間の活動の記録や成果をまとめた要覧という冊子を製作・発行しています。いまアクセスいただける最新のものは2023年版で、こちらからご覧いただけます。上記のテーマは、要覧の研究室紹介のページにも、図も添えて掲載しています。所外の方で目を通されている方は多くない気がしますので、下に貼り付けておきます。図に取り上げた話題、すなわち、進化上失われやすい遺伝子は進化速度が速く、GC含量や周辺のリピート頻度が高く、そして、遺伝子発現領域が狭い、というFoxG遺伝子群に現れた傾向は、2018年に出版した論文(Hara et al., Nat Ecol Evol 2018)で報告したものでした。これがきっかけとなり、のちに全ゲノム規模で見られる脊椎動物に広く見られる傾向を報告することとなりました(Hara & Kuraku, eLife 2023)。この2023年の論文は、上記の3つのテーマのうち、「2) 細胞レベルの現象の理解に基づくゲノム進化機構の解明」に沿ったプロジェクトだったといえるでしょう。哺乳類に焦点を当て、公共データベースの既存配列データのみを用いて、データ取得のためには研究予算を使わずに、ゲノム内の不均一性をあぶり出すインシリコデータ解析の結果を報告したものでした。




閲覧数:111回
bottom of page