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  • 執筆者の写真Shigehiro Kuraku

ABSと名古屋議定書

先週、遺伝研のABS学術対策チームに掛け合って、研究室で調べる対象となる生物種について、「名古屋議定書 (Nagoya Protocol)」に抵触し問題となる部分がないか、相談に乗っていただきました。ABSはAccess and Benefit-Sharingの略ですが、ABS自体はルールというよりあくまでも概念であり、これに関するルールが「生物多様性条約 (Convention on Biological Diversity(CBD)」の「名古屋議定書」に含まれている、という関係にあります。


今回相談させていただいた主たる生物種は、水族館で長年継代飼育されていたものでした。名古屋議定書の国内措置施行の前に国外から日本に移入されていたとはいえ、その経緯等をできるだけはっきり把握し、必要とあらば証拠となる資料を提出できる備えをしておくべき、という風に以前からご案内いただいていました。その後、水族館側で、1980年代にまで遡って移入の経緯についての情報を詳しく収集していただきました。この情報があっても、万一の申し立てのリスクはゼロにはなりませんが、もしもの際の自己防衛の一応の準備が出来たと考えています。


ほか、国内のペットショップから入手し継代されている他の外国産の生物についての相談にも乗っていただいています。そのままのでの研究利用は潜在的なリスクがあるため、適正と思われる対処法をご案内いただきました。具体的には、サンプルの由来についての詳細な調査やその証拠集めと並行して、正式に提供国からの再取得の手続きを進める、ということです。


遺伝研のABS学術対策チームは、日本全体の中で学術研究に関する情報発信の中心拠点であり、代表の鈴木睦昭さんは、最近Nature Communications誌に論文出版された世界的な活動へも著者として参加されるなど、代わりのきかない役割を果たされています。ABSを軽視したせいで、論文出版できない、あるいは出版が遅れるというケースも近くで起きています。不安な点がある方は、他機関からでも直接ご相談いただくとよいと思います。


(この時期、否が応でも「花」の写真が増えてしまいます)


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