• Shigehiro Kuraku

八目鰻ゲノム

更新日:6月13日

対象が限られますが、興味のある方にとっては重要な情報かと思い、文字にしておきます。


まず漢字で書いてしまいましたが、八目鰻=ヤツメウナギです。余談ですが、ドイツ語では Neunaugen(九つの目!)です。これも余談ですが、絶滅危惧種のニホンウナギなどのウナギ類の仲間ではなく、上下顎からなるアゴを持たない、円口類の仲間です。


↓ カワヤツメ。過去の共著作 Takio et al., 2007より。クリックで拡大。

テキサスのチームがカワヤツメ(Lethenteron camtschaticum、以前はL. japonicumと呼ばれていた)の染色体スケールのゲノム配列を新たに公表しました。そのチームがこのページで紹介しています。以前、シンガポールのチームが中心となって公表したゲノム配列を、DNAの核内3D構造をもとにして(いわゆる、Hi-Cデータを用いて)繋ぎ上げたものです。オープンなデータ公表が浸透しているおかげで、解析のつづきを、世界の別の場所で進めることができるわけです。おそらく別個体からの試料(釣具店から入手したオス筋肉、との記載)を用いていることや、もとの配列を繋ぎ上げる際に、間の領域は未決定なまま(正確な長さが不明なNの連続として埋められている)ということに注意が必要です。


私の研究室では、以前この生物について公表されたゲノム配列上の遺伝子推定を行い、クロマチン制御因子CTCFについての解析の一部として公表していました(日本語記事でも以前紹介)。もし、上記の染色体スケールのゲノム配列についても、他所で行われていないのなら、私の研究室で遺伝子推定を行うことは可能ですので、直接ご連絡ください。


ヤツメウナギとは異なりますが、軟骨魚類イヌザメについても上記のテキサスのチームが染色体スケールの配列を公表しています。私の研究室で公表したゲノム配列を、同じく別個体の試料を用いて延伸したものです。ちなみに、彼らは、こういったデータを公表する予定だと事前に連絡をくれていました。私の研究室では、イヌザメについて、同じ個体の試料を使う、ということにこだわって、ロングリードとHi-Cによる染色体スケールのゲノムDNA配列の構築を進めています。遺伝子セットも付随した情報をいずれリリースできると思いますので、こちらについてもご興味あればいつでもご連絡ください。


私の研究室では、すでに公表されたジンベエザメのDNA配列断片(いわば生データ)を公表データベースからダウンロードし、プログラムで繋ぎ上げる「ゲノムアセンブリ」を行って、その産物(公表されていたものから大幅に改善!)を含め論文の発表を行ったこともあります。DNA情報を扱う研究界隈ではもうあたりまえになって久しいですが、オープンデータが生命科学の研究の進歩を後押ししています。

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