分子系統学的観点から、進化上失われやすい遺伝子をelusive genesと呼んでいます。複数の独立の系統でオーソログがゲノムから欠失している遺伝子のことです。最初は爬虫類ソメワケササクレヤモリのゲノム解析(Hara et al., BMC Biol 2018)に付随して解析し、より最近に哺乳類ゲノムでより詳しく調べました(Hara & Kuraku, eLife 2023)。elusive geneがより高い頻度で存在し、高い突然変異率を示す領域をpermissive fieldと呼んでいます。また、こういったゲノム内の特徴の偏りを「Field disparity(ゲノムの場の不均一性)仮説」として提唱しています。現・北里大学未来工学部の原雄一郎さんが推進してきた研究です。
上記のeLifeに出版した論文においてTable S2として収録したヒトのelusive geneのリストを、あらたにゲノムブラウザなどに取り込みやすい形に用意しました。Figshareからダウンロードいただけます。
当の論文のFigure 7では、ヒトゲノム上にelusive geneを配置し、ニワトリのマイクロ染色体への対応を表示していました。系統を跨いで比べると自ずと見えてくることが色々あります。ヒト以外の生物のゲノムを調べることでヒトゲノムの特徴が浮かび上がってきたというわけです。

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