以前ここで「あくまでも出発点」として取り上げた、サンマの論文が出版されました。
出版後、植物生理学会、生態学会、倉谷滋博士理研リーダー退任記念研究会、水産学会とイベント続きでタイミングが後れてしまいました。
NHKをはじめ、各メディアでも取り上げていただいています。
データは昨年の晩夏に既に公開し、論文原稿もプレプリントとして見れるようにしていましたので、新しい情報は少ないのですが、ひと区切りです。こういうときに丁度よい雑誌としてDNA Researchという雑誌を選びました。
遺伝研からのプレスリリースとして、下記のページで紹介していただいています。また、そこからプレスリリース資料へとリンクが張られています。アイキャッチ写真は今回ともに取り組んだアクアマリンふくしまの展示エリアのサンマ水槽の外観です。泳いでいるサンマをゆったり眺めることができるのは世界でここだけでしょう(ただし、年中いつでもというわけではありませんのでご注意ください)。
プレスリリース資料では、今回生物学的な発見をしたわけではないとはいえ、どういった要素のおかげでスムーズに進められたのかなどを説明しています。sQuantGenomeプロトコルやiconHi-C(アイコニック)プロトコルのことです。そして、Washokuバイオゲノムコンソーシアムにも触れています。
目ざとい研究者の方なら、上記プレスリリース記事図中のNCBI Genome Data Viewer上のサンマのデータに気を留められるかもしれません。最近とくに整備された可視化ツールであり、他の多くの生物のゲノムワイドデータをブラウズできるようになっています。
誤解のないように書いておきますと、2022年度いっぱいで閉じた理研時代の研究室とは違って、当研究室にDNA読み取り装置(シークエンサ)が配備されているわけではありません。シークエンサを近くで利用することよりも、出てきたデータをふさわしい形へ加工し、生物学的な解釈を導き出すことのほうが重要です。今回のサンマの場合に限っては、自分たちで深く調べていく、というよりは、他所で広く使ってもらえるように、データの公開と共有に重点を置いた公開のしかたを目指しました。
生命の共通語であるDNAについての研究の価値は、特定の生物にとどまるものではありません。DNA情報の解析手法やデータベースの利用については、サンマの話題を通して、他の生物での研究の進展のための小さなてがかりが沢山もたらされることを期待します。
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